お医者さんの言うことはなんでも信用できそうな気がします。
白衣の持つ効果に、その人が立派に見えることがあります。 ランニングシャツを着ている人に「治療すればあなたはきっと良くなりますよ。 このまま頑張ってください」と言われるより、白衣を着た人に「ほぼ順調ですね、 このペースでリハビリも続けましょう」といわれたほうが信用できて安心もします。 これが中身は同じ人で衣装が違うだけでもそう感じてしまうのは、白衣の持つ神聖 さとそれまでの人生経験がそうさせるのでしょう。 患者さんの心を落ち着かせる、そんな効果も持っているので泌尿器科のドクター や美容整形外科医さんに欠かせないマストアイテムなのです。 正直治せるか自信ない、難易度の高い手術になりそうだというシチュエーション でも、白衣で「大丈夫、信じて」と言えばたいていの患者さんは安らかな顔で 医師に身を委ねるでしょう。 騙しているようでちょっと嫌だな、と思う人もいそうですがこれもりっぱな治療 のテクニックで、病は気からというように本人がその気になれば虫歯だって簡単に 治ってしまうし、薄毛の男性でもあっというまにフサフサになるのです。 安心して治療を受けてもらえばそれだけ完治も早くなる、これは心が身体に影響を 与えることになるのでにわかに信じがたい話ですが、実例はいくらでもあります。 宗教めいたものになりそうですがこれまでの歴史の中で何度も実証されてきた、 疑いようのない事実です。 ですがこれは長い人生を歩んできた大人のみに通用することで、子供の場合は 白衣の力はあんまり通用しません。 お医者さんなら病気を治してくれる、という先入観もありませんし、妖怪の知識 が豊富な子供なら真っ白な衣装の医師を見て「こいつは妖怪だ、敵だ!」と認識 するかもしれません。 歯医者さんを恐がる子供なんかも過去に虫歯の治療で痛い思いをしてきたから でしょうし、その記憶が蘇って白衣のお医者さんに対して恐怖心を抱くのです。 そんな子供に白衣は逆効果なので、少児科ではブルーやピンクの白衣を着た看護婦 さんが多いのだと思われます。 幼児が恐がる病院ナンバーワンの歯科医院でも歯科医師や歯科助手さんの制服は 白色ではない割合が高く、来院者の年齢によってカラーに違いがありそうです。 でも幼少の頃に病院で恐い思いをした人だといくつになっても白衣を恐れるかも しれませんし、トラウマになるほど深く心に刻まれた過去の傷がうずくだけで 安心感を得られるわけがない、という人もいると思われるので、大人でも子供の ように白衣に対して拒絶反応を起こすこともありそうです。 大人になってからも手術を何度もしており白衣には恐いイメージしかない、という 人もいれば、お医者さんをみると去年の交通事故を思い出してしまう、という 元ドライバーも少なくはありません。 なので30~40歳なら白衣で間違いなし、と決め付けても良くなく、どの年齢層 に対しても色付きの白衣を用いた方がいいと考えるドクターもいます。 白色の方が信頼できる、色付きの方が恐くない、とそれぞれに言い分はあるので どれが正解かは一概に言えず、経営者の考えで決めるしかないでしょう。 また白衣には清潔感があるので、医師の人物だけでなく院内ごと病気に対する 安心も感じられるのではないでしょうか。 清潔で真っ白い厨房で調理されたラーメンはおいしそうであるのに対し、ゴキブリ が走り回っている油まみれの食堂で出される野菜炒め定食はまずそうに感じます。 それと同じで色の持つ効果はいろいろなことに波及するのです。 院内を白っぽくしてくれるので、清潔で病気もすぐに治りそうな気分にさせられる のでしょう。